長谷川光志
映画が終わって、世界が始まる。
巨大台風が関東を直撃しようとしていて、明日は鉄道も計画運休、世の中は一日だけ止まることになっている。雨は降り続いている。
「海よりもまだ深く」(2016)を観た。
360度どこから見ても二枚目な阿部寛が、寝グセ頭でダサいTシャツを着たダメ親を演じる。こういうのは役者がいい男であればあるほど引き立つね。
何者かになろうとするが何者になりたいかわからず、何者になりたくないのかもわからず、しかし立ち止まっているわけでもない。己を支えるものもあるし、失いたくないものもある。よかれと思って振り絞った言葉が、言い訳のように響いてしまう。八方塞がりに見えても、世界は続いていく。
父親と子どもの関係というのがある。
母親と子どもの関係というのももちろんある。
それがどんな形になったとしても、世界は続いていく。
この映画は何も決着しない。ひと段落ついて、めでたしめでたしじゃない。元嫁、息子との来月の約束の日に、また失敗するかもしれない。次が本当の最後になるかもしれない。だがもしかしたら、その正反対になるかもしれない。この人たちがどんな未来を生きていくのか、それは映画最後のシーンから始まる。
園子温は「映画は質問状だ」と言った。大島渚は「わからないものをわからないままズバッと見せるのが映画なんだ」と言った。混沌の中に、何かが始まるという息吹を感じさせるのは最高のアートだと思う。
(是枝監督といえば最新作「真実」が公開されて明日はオフなのに、台風直撃だ。)
映画が終わったところから、世界は始まる。
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