長谷川光志
ワンダフルにする方法

下北沢ビッグマウスでのライブの前に、ビッグマウスから徒歩数分のスタジオでレコーディング。
ビッグマウスの19周年(!)を祝うコンピレーションに収録される一曲は、出来たばかりの新曲に決めた。弾き語り一発録りははじめての経験だった。レコーディングブースの中で今の自分と正面から向き合う。
自分の部屋で一人に向かって歌っている感じにしたい。エンジニア伊三野さんにそう伝えて、ヘッドホンしないでレコーディングしたのもはじめてだった。おかげでとてもパーソナルに響く録りが出来たと思う。自由にやらせてくれた伊三野さんに感謝。マスタリング終えてどうなるか、楽しみがまたひとつ増えたワンダフルな土曜日の昼下がり。
ギターを置いて、下北沢を歩いた。寒の戻りのつーんと冷たい風。せい家でラーメンの中と生ビール、950円也。
下北沢のお気に入り、カフェ トロワ・シャンブルへ。瑞々しく苦いニレ・ブランドをすすりつつ池波正太郎「散歩のとき何か食べたくなって」を読み終える。池波正太郎の歴史小説は一冊も読んだことがないのに、食に関するエッセイが好きでしようがない。
ライブリハーサルまで残り30分になってディスクユニオンに小走る。ハードケースがないと機動力が違う。
狙っていたCDはなかったけど狙っていた本を見つけて即レジへ。
リハの時間でビッグマウスへとんぼ返りの小走り。
リハーサル、新曲のキーについて相談したり、試したり、納得したり。ワンダフル。
リハ後開店までの時間に外国人のお客さん二人。ひとりはfromニューヨーク、ひとりはカリフォルニア。ビッグマウスではこんなシチュエーションがけっこうある。ここぞとばかりに体当たりで話しかけてみる、いつものパターン。なにしろその昔うちはコネチカットからホームステイを引き受けたことがあるのだ。ジョンが一週間くらい家にいたのだ。「カシオさん」とジョン呼んでいた電子辞書を携帯していろんなところに出かけていったのだ。気持ちとジェスチャーでなんとかなるものなのだ。ワンダフル。
ライブではレコーディングしたばかりの「ワンダフル」を初披露。これからどんどん成長していくに違いないけれど、「初披露」は一回きり。ベストを尽くした今日には、今日にしかない良さがあるって実感。
ライブ終わってビッグマウス、また終電まで呑んで話して駅まで小走り。ライブに来てくれるって本当に嬉しく恐ろしいこと。それを正面から受け止めて、自分の音楽で返していくという長い長い道のり。恐ろしく長くて先の見えない道。その中を前を向いて歩いている自分と、背中を押してくれる人やきもち。
たくさんのことがこのワンダフルを作ってる。