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  • 執筆者の写真長谷川光志

ストリングス

更新日:2019年12月13日



しばられたい。


あそびなんかいらないんだぎゅっときつく


しばってくれよ髪の毛みたいなほそい糸で


君はだんだんきもちよくなってきて


だってはじめからこれがしたかたったのよ


糸のしんどうの呼吸でわかる


まる見え、それでぼくは恥ずかしくなる


味噌汁がうまくのめないし


プールの時間にはみんなのわらいものだ。




さてしばられていることに慣れてきたぼくは


ちからを緩められるとくすぐったくて仕方ない


このまま書店に行ってみよう今日は


お気にいりのブックファーストじゃなくて


もっと小さいとこがいいなそうだ、


ブックスハヤカワあたりがいいな


店のオヤジがぼくらの行為をずっと観察している


対角線にいっても鏡に映ってしまうし


手にとった本をレジにもっていって


お金を払って出ていくまでずっと見てるんだぜ


まいっちゃうよな、なんて言いながら


こんどはぼくがきみをしばりはじめていた


ダダリオのブロンズ弦、エクストラ・ライト。


おたがいぐるぐるまきになったあとで気づいた、


ぼくらみうごきがとれそうにないね。


きみが見ていないときにいろいろ


たのしいことしたかったのに



#恋をしよう #ストリングス #詩 #髪の毛 #糸 #プールの時間 #書店に行こう #ダダリオ #みうごきがとれないね #恋 #日記

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