長谷川光志
壊せ
更新日:2020年6月6日
集団は異物を叩く。
多数の中の少数を叩く。
男の中の女を叩く、女の中の男を叩く。
考え方の違う奴を、思想の違うやつを
できない奴をできる奴が、
できる奴を出来ない奴が叩く。
見た目の突飛な奴を、目立つ奴を、
様子のおかしい奴を叩く。
若い奴が年寄りを叩く。
大人は若者を叩く。
人は多数の側に滑り込んで
息を潜めたい動物だ。
犬や猫のように表現もできず、
全能だと言わんばかりの顔で
黙っている。
空気。
空気は読むためにあるのでも
作るためにあるのでもない。
壊すためにあるのだ。
空気を壊せ、今
そこにある空気を壊せ。
言葉で。
行動で壊せ。
壊すことでお前が今
生きていることを示せ。
考えうるあらゆることはそこからしか
始まることができないのだから。