top of page
  • 執筆者の写真長谷川光志

ピースマーク



瑞々しいトウモロコシみたいな銀杏の木が灰色の大通りに沿ってリズム良く立っている。


東京の風はすっかり冷気を帯びて、深呼吸をするとこめかみがじんと痺れるこの感じが好きだ。寒い日は歩くことに決めよう。かじかむ指をポケットに突っ込んで歩くと、暖かいが引き受け、冷たいは預けるように溶け合っていつしか自然と温まってしまう。

生きてる体はやっぱり温かくて、ドキッとする。生きてる体は生命体。冬は何度でも気付かせる。


歩くとは移動することか、それとも探すことか。

あたしはここにいるよーと呼び止めた

黄色い手袋をして笑った君の

小さなピースマーク。


#詩 #ポエム #poem #冬 #銀杏 #ピースマーク #歩く #東京 #シンガーソングライター

0件のコメント

最新記事

すべて表示

理由

夏になると蘇ってくる記憶がある。 それは蒸し暑い午後に、祖父の腕まくらで昼寝をした記憶ー。 寝転がって見上げた天井の染み、目の前の祖父の肌、夏の粘り気のある暑さに時々窓から吹き込む風の心地よさなど、そのときの光景や感覚は今でも驚くほど鮮やかに思い出すことができる。 中学校に上がってからはさすがに一緒に昼寝をすることもなくなったから、あれは僕の小学生時代。今から30年以上前になる。 祖父母は浜松で豆

これは間違いだ、ということは間違いがなかった。 「わたしはどこかで道を間違えたんだ。」とはっきり彼女は思った。ただ過去のどの場面で、どの選択を謝ったのかはすぐにはわからなかった。 数えきれない選択のすべてを《正解》で数珠つなぎにしたような、私が歩むべき理想のコースがあって、それをあるとき一歩踏み外したのだ。その一歩がどれだけ致命的であるかを思い知った。 踏み違えたポイントを起点にして、あとはどれだ

bottom of page