長谷川光志
ピースマーク

瑞々しいトウモロコシみたいな銀杏の木が灰色の大通りに沿ってリズム良く立っている。
東京の風はすっかり冷気を帯びて、深呼吸をするとこめかみがじんと痺れるこの感じが好きだ。寒い日は歩くことに決めよう。かじかむ指をポケットに突っ込んで歩くと、暖かいが引き受け、冷たいは預けるように溶け合っていつしか自然と温まってしまう。
生きてる体はやっぱり温かくて、ドキッとする。生きてる体は生命体。冬は何度でも気付かせる。
歩くとは移動することか、それとも探すことか。
あたしはここにいるよーと呼び止めた
黄色い手袋をして笑った君の
小さなピースマーク。