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  • 執筆者の写真長谷川光志

「成り上がり」と卒業式


中津川。旅のお供に選んだのは矢沢永吉の「成り上がり」で、これはバースデーライブの前後で矢沢永吉の誕生日も9月14日だと教えてもらいひとしきり盛り上がったから。永ちゃんはやっぱり凄いんだという話で酒を呑んだし、思い返せば今年のはじめのナカノサウンド、なぜかみんなヤザワでMCするブームが(おそらくその日だけ)到来。さらにこの前の代々木公園のライブのあと、うじきさんに「後ろの方でちょこちょこ動くのやめなさいよ。どーんと前にいなさい、永ちゃんを見習って」と言われたんだ。思い出した。


というわけで今年はなぜか矢沢永吉なんです。成り上がり、ずっと部屋に置いてあるのに読んでなかった。たくさんあるそういう本。このタイミング!と思って持って行ったよ。


予想通りなのか予想以上なのか、とにかくヤザワの言葉には感心を通り越して笑ってしまう。生い立ちとか、不遇の時代のことなんて知らなかったから、そうかそうかこのときこう考えてこんなふうに実行したのかヒドイなあとかスゴイなとか思った。ぐさぐさ刺されるところたくさんあった。安心したいだけなんですよ、とか。ハートに汗かくとか。

ばくばくしゃべって突然敬語になったり、凄いよね。文法持ってる、独自の。


読んでいて一番シンクロしたのが、バンドでこれからってとこで親知らずになって死にかけたってところ。大事な日のその当日に、ってので思い出した。


小学校の卒業式当日。いきなり盲腸になったんだ俺。朝起きて、突然。パッと目が覚めて、もうダメよ。起きられない。体ねじることもできないのよ。昨日までなんでもなかったのに。

もう「お母さーん!」だよね。声出すのも辛いわけ。ウンウン冷や汗かいてうなってる息子に母、言ったよね。


「昨日、言うこと聞かなかったからでしょ!」って。


関係ない。関係ないけど言い返す気力もない感じ、わかる?このニュアンス。そうかなあ、俺が悪いのかなってね。もうウンウンうなって、学校に連絡して病院行ってきますって。式は出られないかもしれませんって伝えてさ。大事よ、ガキの頃のそういうイベント。でももうそれどころじゃなかったね。この痛みどうにかしてくれって。で、病院直行。たしか痛み止めかなんか打って、そのまま行きましたよ卒業式。もう式始まってるところに遅れてね、車椅子で体育館に。注目よ。あっ!来た!みたいなね。でも偉い人が挨拶がしてるからクラスメイトもひそひそ喜んでくれてるみたいなさ、そんな感じで。卒業証書も受け取ったよ。壇上へは確か自分で上がった。真っ青な死にそうな顔でさ。だから卒業式の記念写真?俺死にそうな顔よ。全然晴れ晴れしてない。周りはみんなピーハツな顔してますよ。お別れで寂しいけど門出だからねやっぱり、爽やかですよ。でも俺だけ、病人の顔。そのまま病院にトンボ帰りで即入院よ。それからがまた大変でねえ、俺そもそも我慢強いみたい。

先生が聞くのよ、俺のお腹ちょっと押したりして「ここは?」とか「これ痛くない?」とか言ってさ。で、俺考える。痛いよ確かに。一人じゃ歩けないくらい。寝てるか車椅子。でも頭の隅で、この「痛い」はみんなが感じるレベルの「痛い」?普通の人はこれぐらい耐えられる感じ?痛いって言っていいの?って。それずっと考えてた。これ、ホントよ。

だから俺、このとき知った。痛みは個人差よ。幸せも悲しみも人それぞれ。絶対値、ない。


どうやらね、弱い男だと思われたくないという自尊心があったみたい、当時から。笑うね、一丁前に。それで、これは痛いと言っていいのかどうかずっと考えてたら、緊急手術よ。突然。検査かなんかピー、ピーとやってさ。「危ないです、腹膜炎の一歩手前です」って。よかった。キーラツよ。あのときのね、先生には感謝してます。


最近のヤザワ、弱くたってなんだっていいじゃないかと思うようになった。強いも弱いもひっくるめて全部が自分じゃねえかって。さらけ出すということは大人になっていくことなのかもしれないな。これからいい曲、書けますよ。



(書いているうちにヤザワ成分が増してきてしまい、最終的には矢沢永吉になってしまいました。それだけ印象的だった、ということです、はい。凄いです矢沢永吉は。凄い凄いと思っていましたが二十代でこれとは。大きすぎる刺激をもらった)


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