長谷川光志
みんなで作るということ
「ザ・マジックアワー」(2008)を観た。
映画というのは特に、みんなでひとつのものを作り上げる感じがわかりやすい。一本の映画の向こう側に、携わったたくさんの人たちが見えてくる。役者はたくさんの思いを引き受けてカメラの前に立つんだろうし、監督はその役者たちの思いもすべて引き受けてひとつの作品にまとめ上げるんだろう。
「みんながひとつのものを作るためにがんばる」ということが持つ、この感動はいったい何だろう。
二十歳くらいのとき、友人で役者を目指している奴がいた。はじめての「発表会」をやるというので観に行った。たしかその彼が通っている養成所の稽古場を解放して行われた。高円寺とかそのあたりだったはず。役者を目指している、若者から40代くらいまでの生徒たちが演じる初々しさ200%の舞台は、演目すら忘れてしまったけれど、若く感受性豊かな俺の心を揺さぶったことは覚えている。お金をとって演技をするにはまだ程遠い人がたくさんいたはずだけれど、その「みんなでひとつのものをなんとか作り上げようとしてる感じ」が、ずどんずどんと胸に響いた。美しいなあと思った。
普段ひとりで弾き語りをしているときに感じづらいこと。みんなで作り上げること。たとえば合唱団で歌うとか、もっと小さな単位で言えばバンドで演奏するとか、そういうものに近いのか。主張と調和という、せめぎあうもの。
「ザ・マジックアワー」は、成り行きでウソの映画を作り上げなければならなくなった人たちの映画だが、それが映画を作るということの素晴らしさと、できあがった映画の素晴らしさを、どちらも教えてくれる。笑いと涙をもって。すごいことだ。作り上げるというのは、すごいことなのだ。
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