長谷川光志
愛せ
愛せ。まず自分を愛せ
どんな角度からも愛せ
欲望を愛せ欠落を愛せ
抱えた強さ弱さを愛せ
まわりと違う自分を愛せ
周囲になじめない自分を愛せ
なじむことを諦めた自分を愛せ
抱え込んだ孤独を愛せ
孤独をめざす己を許せ、愛せ
突然人恋しくなる自分を愛せ
人恋しさそのものを味わい愛せ
人を恨む弱さを愛せ
逃げたくて消えたくて
死んでしまいたい心を愛せ
裏切りを愛せ
期待を愛せ
五感が感じる自然のすべてを愛せ
朝日を、風を、またたく星を、
大地を、木陰を、
音のない言葉を愛せ
誰かを愛した日々そのすべての時間を
すべての熱量の積み重ねを
徹底的に愛せ
人のために流した涙と
自分のために流した涙の
たとえようのない美しさをもう一度
はっきりと愛せ
どんな角度からも徹底的に
愛して愛して愛し尽くせ
なにもできない自分を愛せ
手も足も出ないのになぜだかやってくる
あの全能感を愛せ
そこでただ息をしている
何も見ず何も聞かずただ
息を殺して息をしているだけの
お前は愛そのものなんだ
愛することしかできない自分で
自分自身を愛し尽くせ