• 長谷川光志

こわいゆめ

「わかった。お願いだから目をつぶって。」


まっ暗なのにきみの顔が見えていたのは月がでていたからだったろうか。それとも豆電球のあかりの下で、ふたりで風呂に入っていたんだっけ。

言われたとおりに目をつぶったら辺りはほんとうの闇になって、闇のほんとうの暗さにぼくは感動すらしていた。ぜんしん顔まで水の中にいたけど不思議と苦しくはなかった。ということはやっぱり海のなかにいたんだね。


それから口の中になにか細いものがやさしく入ってきて、それがストローだとわかった。くちびるって敏感なんだ。これがきみの舌だったらいいのにと思った。そこを期待どおりに冷たくて甘いカルピスが流れてきて、ぼくは思わず口をひらいた。カルピスが外にもれると同時に、あたたかい水が口の中に入ってきた。


そしてそれからキスをした。

海の中で何度もキスをしていたら、そのうちふたりとも海になってしまうと思った。約束をやぶったらきみが消えてしまう気がしてぼくはそのあいだずっと目をつぶってたんだ。おたがいの肩にもたれながら冷たい廊下に座って、ぼくらは言葉をさがしていた。そしてきみは言った。


「ねえ、一緒に逃げよう」



ひさしぶりに悪夢をみた。なんかい起きてなんど寝ても悪夢の続きなんだ。どうかしちまった気がして怖くなるくらいだったよ。

なにがそんなに怖かったのかもう思い出せないんだけど、きみのことははっきり覚えている。


カルピスの味が、まだしている。


#悪夢 #夢 #dream #カルピス #キス #月 #豆電球 #海 #詩

最新記事

すべて表示

こころ

心に負った傷が痛んで、疼いて、それが続いてもうダメかもしれないというところまで耐えたとき、君の近くに君と同じように痛みに耐えている人がいることに気付くだろう。 そして、その人のために何かできることはないか考えるはずだ。 そのとき「こころの超回復」がおこる。 前よりも強く、優しい君になる。 想像することの前には常に体験がある。 それを繰り返して少しずつ大きく、深い君になっていく。 #日記 #詩 #こ

0グラム

たとえば「光」という文字 それ自体が光を放つわけではない。 ひとり「愛」と囁いてみても 言葉自体に愛は内包されていない。 「幸せ」も「楽しい」も 「苦しい」もほかのどんな言葉も それだけを抽出すしたら単なる記号で 重さ0グラムの頼りない記号。 実体不在の器みたいなものだから そこに意味を注ぎこみ、 存在する意味を与えるのは 言葉を使う人間に完全に委ねられている。 たとえば刃物をどう使うかで 人を生

壊せ

集団は異物を叩く。 多数の中の少数を叩く。 男の中の女を叩く、女の中の男を叩く。 考え方の違う奴を、思想の違うやつを できない奴をできる奴が、 できる奴を出来ない奴が叩く。 見た目の突飛な奴を、目立つ奴を、 様子のおかしい奴を叩く。 若い奴が年寄りを叩く。 大人は若者を叩く。 人は多数の側に滑り込んで 息を潜めたい動物だ。 犬や猫のように表現もできず、 全能だと言わんばかりの顔で 黙っている。 空

  • 長谷川光志 Facebookページ
  • Instagram
  • 長谷川光志 Twitter
  • White SoundCloud Icon
  • 長谷川光志 YouTubeチャンネル
  • Tumblr

神奈川県-東京−日本

hiroshihasegawa2015@gmail.com

© 2010-2017 HIROSHI HASEGAWA