長谷川光志
ごめんよ梅雨。
歌うたいにとって、梅雨はもっとも憂鬱な季節。
僕らは楽器を持って出かけてゆく。
アコースティックギターは木でできているので湿気には神経を使うし、びしょびしょに濡れるなんてもちろんご法度だ。
雨降りの日はなかなかのもので、
左手にギターケースを抱えて
背中には物販や衣装を詰め込んだリュック
右手に傘を持ったら
ポケットの中でスマホが鳴ってもそう簡単に取り出すことができない。コンビニでコーヒーを買いに入るにもすこし気合が必要だ。雨降りかどうかというだけで機動力がまるで違ってきてしまうのだ。
それでも毎年、必ず梅雨はやってくる。
梅雨の間ももちろんライブに出かけて行く。機動力は落ちるけれど、道中は期待感に満ちている。雨は俺にも降るけれど、聴きにきてくれるみんなにも同じように降る。雨の中を来てくれるお客さんたちをどうやったら満足させられるか、考え始めたら雨なんて関係なくなってしまう。
その場所で待っているなにか。
その場所で会える誰か。
それがどんなに大きいものか、「無観客配信ライブ」に向かう電車の中でひとり考えている。今日は画面を通して、向こう側で聴いてくれているみんなを思い浮かべて歌う。シンガーソングライター は想像力で生きてる人種だからね、この歌がみんなのいる場所まで届いているというポジティブなイメージなんて朝飯前だよ。
そして想像しよう。次にみんなとその場所で、ライブハウスで、思い切りハグする瞬間を。笑って乾杯する瞬間を。会場がひとつになるようなライブを。それをしている自分を。そのときのみんなの表情を。
日吉まであと20分。
車窓からは雨がずいぶん小降りになったように見える。駅についたらライブハウスまで傘をささずに行けたら、いま思いつく中で一番幸せなことだな。
ごめんよ、梅雨。
歌うたいにとってもっとも憂鬱な季節。
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