長谷川光志
HOKUSAI
北斎展を観たのは8月の終わりでした。
画業、実に70年。
生涯に93回も住まいを変えた転居癖。
数えきれない作品群。
時代によって画風を変化させながら
革新的な表現を求めた画家。
展示の入り口、一番最初のパネルに
「Never too late」とあった。
あの「神奈川沖波裏」で有名な富嶽三十六景は、60歳前後のときに描かれたものと知って驚いた。その後も精力的に描き続け、晩年は炬燵にもぐったまま筆を動かし続けたという弟子の記録がある。食べ終わっても片付けることもせず、描いては寝て起きては描いたという。一生を絵を描くことに捧げた。
「七十三才にして稍禽獣虫魚の骨格草木の出生を悟し得たり。故に八十才にしては益々進みら九十才にして猶其奥義を極め、一百歳にして正に神妙ならんか。百有十歳にしては一点一格にして生るがごとくならん」
死の直前には「神があと三年永らえさせてくれたら、もっといい絵が描けるのに!」というようなことを言った(と、解説があったと思う)。
こんなことばを聞くたびに、俺は勇気づけられてしまうんです。
本を読むことが死んだ人と話をすることなら、絵をみることはその生を目に焼き付けることと見つけたり。