• 長谷川光志

ギフト (髪の切りどき)

髪の切りどきはいつだって逃してしまう。


いつもカットしてもらってるyoshiくんのお店に行くとき、俺いつもわくわくして出かける。柄にもなく「わくわく」なんてことばを使ってしまう気持ちで出かけていく。


生まれて初めてパーマをかけたときもyoshiくんにやってもらった。彼はとてもすごい才能をもっていて、それはヘアスタイリングの技術はもちろんだけどそれ以上のなにかをもっているからいつもわくわくして会いにいく。


そもそも髪を切ってもらいにいくという感覚ではなくて、会いにいく感じなんだ。話をしにいく感じだし、近況を報告しあって、夢を語り合って、エール交換しにいく感じ。

もちろん俺が音楽やってることは知っているし、座っているところに彼がやってきて鏡ごしに表情を見れば、俺のここ最近の状況とか心情を一瞬で見抜いてしまっている(気がする)。


もうこちら側から注文をつけることはなくなってしまって、というのも行くと彼の中ではすでにドラマができていて「長谷川さん、今回こんな感じかなっていうのを3パターン用意してるんですよ」なんて会話が始まる。で、それぞれスタイルを提案してくれて、でも今日実際お会いした空気から判断すると第二案がベストだと思いますよ、となる。それがだいたい、自分でこんな感じにしたいなあと思ってたのと合致してしまって、yoshiくん、カンペキだよ、あとはまかせた!となる。


あとはもうひたすら話をしてる。彼は髪を切りながら、真顔になったり鏡を見て俺の表情を確認したり、ときに大笑いしたりしながら「お疲れ様でした。」の時間までずっと動きっぱなしだ。


音楽の話、なぜその音楽が好きかって話、最高にぶっ飛んでたお客さんの話、今大切だとおもっていること、仕事の幸せ、人生の壁、夢について。声について、ライバルのこと。世間、自分の生き方について、親へのきもち。いつもよくまあこんなに話したなと思うくらい、自然としゃべってしまう。ふたり、でかい声で。あれぜったいほかのお客さんにも聞こえてるし、だいぶ浮いてるんじゃないかと思う。店の中で。


あるとき彼が「いやあ今日の話、録音しておきたかったです!」と言ったことがあって、それがほんとにウソじゃない感じで言える彼は、すごい才能の持ち主だと思うんだ。


つよく記憶に残ってるのは、人生で一番落ち込んでたときのことをなんとなくふたりで告白しあう流れになった日のこと。

「俺、はじめて景色がモノクロに見えるってほんとうにあるんだと思ったんだよ。色がないんだよ、味もわからないの。もう、これ俺は一回死んだんじゃないかって思うくらいでさ。」

なんてことを話してたら


「そう、それ!俺もありましたモノクロの世界!

モノクロを経験した人は強いですよ。ぼくの場合は…」


となって、その日は神妙な顔して人生談義もあり、それをどうやって克服したのかってことまですっかり話して、最終的にはギラギラ燃えるような熱を胸に感じながらおたがい握手をして別れるというドラマみたいな一日で、だけどいつもそんな感じなんだ。

店を出てから、ああ今までヘアサロンにいたんだよなあと不思議な気持ちになる。


次に会うまでにどんな経験をしてるだろうかと

会うのが楽しみになる人はたいせつだ。

話がしたくなる人は大切な人だと思う。



次は、来年かな。

つまりそれまでどう生きるかを考えさせる、

楽しみをもって考えさせる才能。

yoshiくん、きみはすごいよ。


#ヘアサロン #スタイリスト #髪を切る #日記 #会いたくなる人 #モノクロの世界 #音楽談義 #ドラマ #yoshiくん #才能 #ギフト

0件のコメント

最新記事

すべて表示

僕らの明るいオリンピック

非常事態も緊急事態も解除できないがオリンピックは開会できるのか。これはいったい何のためなんだ。誰のためなんだ。 いったいどうやって応援しろっていうんだ。最初から最後までデタラメじゃないか。デタラメのオンパレードのフルコースだ。これじゃ結局、僕らはなにも変わらないじゃないか。 卑劣なウソで開催権をかっぱらったところから始まり、本当に嘘みたいな不祥事や問題が延々とつづいて国民にも嘘をつきまくって、挙げ

祖父と腕まくら

夏になると蘇ってくる記憶がある。 それは蒸し暑い午後に、祖父の腕まくらで昼寝をした記憶ー。 寝転がって見上げた天井の染み、目の前の祖父の肌、夏の粘り気のある暑さに時々窓から吹き込む風の心地よさなど、そのときの光景や感覚は今でも驚くほど鮮やかに思い出すことができる。 中学校に上がってからはさすがに一緒に昼寝をすることもなくなったから、あれは僕の小学生時代。今から30年以上前になる。 祖父母は浜松で豆